これからの習慣~きれいな姿勢をつくろう~
茂木 潤一(かながわ健康財団 健康運動指導士)
姿勢が悪いと、筋肉や関節などに負担がかかる他、肩こりや腰痛の原因となります。また、年齢を重ねるとともに猫背が進むと、転倒リスクが高まったり、気分が落ち込みやすくなることもあります。無理のない範囲で、良い姿勢を意識しながら生活をすることは、とても大切です。
バランスの良い姿勢は、脊柱を中心(支柱)として、頸椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾骨が積み木のように重なって緩やかなS字カーブで構成されています。凛としたまっすぐな姿勢は、見た目にも美しく感じられますが、大切なことは、立っているときだけではなく、座っているときや動作時にも、身体に無駄な力みがなく、動きやすく呼吸がしやすいということです。
ここでは、良い姿勢を保つためのポイントを紹介します。
姿勢を整えてみましょう
良い姿勢(楽な姿勢)をつくるポイント
(1)足の裏を意識する
足(下半身)は身体を支える土台です。リラックスしてまっすぐ立つためには、足裏の広い範囲が、地面(床面)に接し、かかとが浮いていない状態であることが大切です。ただし、足指を無理に地面(床面)につけようとすると、無駄な力が入ってしまいます。
まずは、足指・土踏まずが地面(床面)につかなくても大丈夫です。なるべく足裏の広い面積が地面(床面)に接していることを意識してみましょう。

(2)腰を反らせない
腰をそらせる姿勢では、骨盤が前方に傾き、背骨(脊柱)の動きが制限されて、上半身がリラックスできない状態となります。猫背を直そうと、無理に姿勢を正して腰を強く反らせると、骨盤が前傾して過度に体に力が入ってしまいます。またこれに合わせて、胸を強く張ったり、肩甲骨を無理に背骨に寄せたりすることで一見、良い姿勢に見えても緊張が強く、長く続かない姿勢になってしまいます。
「リラックスしてまっすぐ立つ」を意識して姿勢を整えてみましょう。

(3)カンペルライン(平面)を水平に
カンペルライン(平面)とは、鼻の先と耳の穴を結んだ線のことです。図のように、自分の顔を横から見たときにカンペルラインが地面と並行になるよう(水平)にすると、首と胸の緊張が取れて背筋が伸びやすくなります。顎を引かず、少し上にあげるイメージです。鏡を見ながら、実際にやってみましょう。

きれいな姿勢をつくるための準備
現代人は、頻繁にパソコンやスマートフォンの操作を行うなど体にとって無理な姿勢で過ごすことが多くなっています。不良姿勢は首や肩への負担も大きく痛みやこわ張りを感じる方も少なくないでしょう。
不良姿勢を改善して、楽に体を動かすための準備をしてみましょう。番号の順番に、体を動かしてみてください。
(1)小胸筋をほぐす
腕の付け根から鎖骨下・胸の上部を手でマッサージするようによくほぐします。筋肉の緊張やこわ張りがほぐれると胸が少し開くようになってきます。

(2)首・肩をほぐす
肩をさすったり、首を上下左右のいろいろな方向に動かしてみてください。コリやこわ張りの強い部分などは、やさしくマッサージをするなどしてよくほぐしましょう。心地よい程度にやさしく行うことがポイントです。

(3)姿勢を整える
カンペルラインが地面と平行になるように、少し顎をあげるイメージ。星印の部分を上に引き上げるように意識します。胴体が長くなるようなイメージで。足裏のできるだけ広い範囲(面積)が接地するように意識してみましょう。

姿勢を改善 ~心と体スッキリエクササイズ~
日常的な不良姿勢や、運動不足などで起こるコリやこわばりのある部分を改善しましょう。ゆっくりと呼吸を続けながら、身体を動かしていくことで、筋肉の緊張も解消して、心身ともにリラックスできます。
以下の体操を参考に、首・肩・体側・背中を意識して動かしてみてください。一度に全種類の体操を行う必要はありません。気になったものの中から1つずつ実施してみてください。
(1)胸・背中の体操
手のひらを外側に向けて、腕を横に開き、肩甲骨を背骨に寄せるようにしながら、肘を後ろに引く。体の前で両腕を出来るだけ近づけ、背中をまるめながら、肘をおへそに近づけるようにする。

時間と余裕があったら…肩回しの体操
腕を曲げ、肘で体の横に大きな円を描くように意識しながら腕を大きく回す。

両手を組んで、背伸び。両手を組んで、腕を体の前方へ伸ばす。

(2)肩・背中の体操
両腕を挙げる。次に、手のひらを外側に向けながら、肘を体側(脇)に近づけるように引き下ろす。これを繰り返す。

時間と余裕があったら…体側伸ばしの体操
机など、しっかりと台に軽く手をついて、胸を挙上し、体を横に倒して、対側を伸ばす。
